民事信託は、自由度の高い財産管理ができる制度です。
遺言書、成年後見などでは実現が難しかった財産管理が可能になるのが、民事信託という制度です。これまでより自由な形で、家族、または信頼の置ける人物に財産管理を任せることができます。
これまで、財産を信託する場合には商事信託(信託銀行・信託会社の利用)が利用されていたため、高額な報酬を支払う必要がありました。そのため、誰もが気軽に利用できるものではありませんでした。
民事信託では、営利目的でない信託が可能なため、費用を抑えて、誰でも利用することができます。
メリット&デメリット
メリット
- 生前贈与、相続税対策、投資などによるフレキシブルな財産管理が可能。
- 本人の死去後も受託者が財産管理を行うため、資産承継、遺言執行、遺産分割がスムーズに進められる。
- 二次、三次相続と、複数代にわたる遺産の承継に、本人の意志が反映される。
- 親族間で争いが生じたときにも、任意後見制度と同様に、本人が任せたい人に財産管理を任せられる。
- 信託報酬を自由に決められる。
- 家庭裁判所へ報告する必要がない(時間・手間の節約)
デメリット
- 成年後見制度、遺言書でなければ執行できない事項もある。
- 損益通算ができないリスクがある。
- 受託者の選任が難しい。
- 受託者にさまざまな義務が生じる。
- 民事信託に精通した専門家を探すのが難しい。
民事信託を弁護士に依頼するメリット
想いが明確になる
お客様から詳しくお話しをお伺いし、どのような想いがあるのか、財産をどのように管理していきたいのかを明確にすることで、適切なプランをご提案することができます。
最適な受託者を選任するためのアドバイスが受けられる
誰を受託者にするかは、民事信託を行う際には非常に重要なポイントとなります。お客様の想いを最大限実現してくれる受託者を選任するためのアドバイスを行います。
信託すべき財産の選定をサポート
信託できる財産には、不動産だけでなく、預貯金、有価証券、金銭債権、ペットなども含まれます。
お客様の財産の状況を詳細に確認した上で、信託すべき財産の選定を行います。
適切なタイミングをご提案
民事信託の開始、終了のタイミングを、お客様のご希望、財産の内容、家族・親族の状況に応じて、適切にご提案します。
民事信託と成年後見の違い
身上監護の有無
成年後見制度では、判断力の低下した被後見人に代わって、後見人が契約・財産管理、身上監護を行います。一方で民事信託には、このうちの「身上監護」が含まれていません。身上監護は、被後見人の生活・健康を守るための契約や費用の支払い等のことです。
医療機関の受診、住居に関する契約、福祉施設の入退所・通所の契約、介護・保険・福祉サービスの申請、またそれぞれの費用の支払いなどを、民事信託では行うことができません。
民事信託でできるのは、財産管理だけ
民事信託で可能なのは、財産の管理のみです。身上監護が含まれないため、成年後見と併用するべきケースも見られます。
民事信託と商事信託の違い
商事信託は、高額な報酬が必要になることも。
民事信託とは異なり、商事信託は営利目的で行われます。信託銀行・信託会社が、所有者の財産を管理・運用・処分を任されます。そのため、商事信託を利用する場合には、信託銀行・信託会社に高額な費用の支払いが必要になることもあります。
民事信託では、信頼のおける個人・法人を受託者とし、財産の管理・運用・処分を、非営利で行います。
信託できる財産&信託できない財産
信託できる財産
- 金銭
- 金銭債権
- 不動産
- ペット
- 有価証券
- 知的財産権 など
信託できない財産
- 生命、名誉
- 債務、連帯保証
- 銀行口座
- 信託設定後に得た利益、財産
- 一身専属権 など
民事信託が活用されるケース
認知症対策として
- 認知症になってからでも、本人の意向に沿った財産管理・運用・処分ができる。
- 事前に財産の使い道を決めておくことで、特定のタイミングで一定の財産を贈与できる。
- 賃貸収入のあるアパートやマンションの修繕計画を事前に決めておくことで、物件の価値を長期的視点から管理できる。
障害のある子の生活の保護を目的として
- 財産所有者が死亡した後も、障害のある子の生活を守ることができる。
- 信頼の置ける親族などに、子の代理として財産の適切な管理を任せられる。
高齢・認知症の配偶者の生活の保護を目的として
- 財産所有者が死亡した後も、配偶者の生活を守ることができる。
- 信頼の置ける親族などに、配偶者の代理として財産の適切な管理を任せられる。
死後の事務手続きなどの委託として
- 自分の希望通りの葬儀を行うことができる。
- 遺品整理、親族への連絡などで、周りに迷惑をかけることがない。
- 死後、不動産を処分して、相続人に適切な分割ができる。
- 信頼の置ける人に葬儀、埋葬、相続、遺品整理を任せられる。
スムーズな事業承継を目的として
- 自分が希望する子に事業を承継させることができる。
- 承継者、非承継者との間での争いを防ぐことができる。
死後のペットの生活環境の保護を目的として
- 自分の死後も、ペットに幸せな生活を過ごしてもらうことができる。
- 親族以外にペットの世話を任せることができる。